最近、米国などの海外でTemuがネット販売サイトとして注目されています。
米国では若年層からはじまり、現在は50歳以上のベビーブーマー世代にもその利用が広がっています。国内でも楽天など既にいろいろなネット販売サイトがあるなかで、中国発のネット大手として、国内でも若者を中心に徐々に拡大しています。
日本国内事業者がTemuを利用するためには、サイト内に出店しなければなりませんが、実際にはどのようにしたらよいのでしょうか。
本記事では、Temuへの出店について、その方法やメリット、デメリットまで総合的に解説します。
Temuの特徴とビジネスモデル
Temuは、中国発のネット大手として、すでに日本国内でも若者を中心に徐々にその利用層が拡大しています。
Temuは、特に安さで勝負している越境ECといわれる分野でのネット通販サイトです。Temuは、その始まりは中国発といえますが、国際的なブランドイメージの向上と米国での販売強化を狙って、2023年5月に本社を上海からアイルランドのダブリンに移しました。現在は、いわば中国発のグローバル企業ともいえる存在になっています。
Temuモデルの特徴は、信頼性の高い海外サプライヤーと直接交渉して国境を越えた小売契約を結ぶことにあります。たとえばヤマト運輸などの、国際自家物流システムを利用したり、あるいは中国内の国営郵便事業と戦略的協力関係の契約を結んだりしています。このように越境サプライチェーンの関与が深く、さらなる発展が期待されています。
Temuは、中国発の越境EC(Eコマース)として、すでに大手の地位を確立しているといえます。
越境Eコマースとは簡単に言えば、異なる国の取引主体で、越境プラットフォームを通じて取引を達成し、決済を行う商行為となります。さらに詳しく言えば、インターネット技術と従来からの国際貿易を融合したものです。現代の情報技術を積極的に運用し、インターネットを媒体とするクロスボーダーでのデジタル取引が特徴です。マーケティング、注文、支払い、物流サービス及び、アフターサービスなどのすべてのビジネス活動を含んでいます。
越境Eコマースでは、以下の 3 つの条件下で取引されるという特徴を持っています。
- すべての取引で情報、資金、物流及びアフターサービスの 4 つの段階を経ており、いずれの段階で問題が発生した場合にも取引の失敗を招く恐れがある。
- 越境ECの流れは複雑であり、検疫、税関、外国為替、納税など多くの段階を経ている。
- 越境ECは、各国の政治経済の状況と輸出入政策の影響を受け、様々なリスクを引き起こす可能性がある。
最近もトランプ政権の関税政策により、米国などではその影響が色濃く出ているといえます。
中国「電子商取引法」とは
Temuのネット販売モデルは、中国発の越境ECに起因しており、中国の「電子商取引法」により管理されています。
複数国での国際業務の一環として、国境を越えた電子商取引は税関通関、検査検疫、外貨決済、輸出税還付、輸入課税などの課題を幅広く抱えているのです。国境を越えた電子商取引とは、異なる国境間の取引主体、国境を越えた物流サービス主体、国境を越えた支払いサービス主体などに関連しています。取引リスクにおいても、異なる国、異なる国境地域間の法律、文化、取引規則、知的財産権保護などの制度の壁があります。
実は、中国「電子商取引法」には、電子商取引プラットフォームの経営者に関する規定が設けられています。電子商取引事業者としての義務に加えて、電子商取引プラットフォーム事業者には、別途の義務と責任も課せられているのです。
電子商取引プラットフォームは、多くの事業者と消費者を繋げているため、プラットフォーム事業者とは、一般的な電子商取引事業者であるだけでなく、電子商取引活動の主催者、管理者、制御者であり、電子商取引において極めて重要な役割を果たしています。そのため、中国の電子商取引法では、その経営者に一定の管理責任と義務を与えています。プラットフォーム経営者の責任としては、情報登録と資質審査、協議規則の公示、消費者権利の保障、プラットフォーム内の公正取引、知的財産権の保護とネットワーク安全の維持などを管理する義務があります。
日本国内からのTemu出店の課題
Temuでは、2025年から日本からの販売事業者の出店受け入れを開始しています。
出店者の受け入れは、日本に先んじてイギリスやメキシコなど10カ国以上で行われています。中国から直送するのと比べてスピーディーな配送を実現でき、顧客満足度の向上やリピート促進が期待できるという点から、現地サプライヤーの受け入れも進めているのです。先ほど記載した電子商取引法の観点からも、現地のニーズやトレンドにあった商品を拡充できるのが、Temuにとってもメリットとなっています。
Temuモデルの特徴は、信頼性の高い海外サプライヤーと直接交渉して国境を越えた小売契約を結ぶことにあります。たとえばヤマト運輸などの、国際物流システムを利用したり、あるいは特定の郵便事業と戦略的協力関係の契約をしたりしています。越境サプライチェーンの関与が深く、さらなる発展も期待できるので、国内の販売事業者にとっても新たな出店プラットフォームとなっています。
Temu出店のメリット
日本の事業者がTemuへ出店する場合、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、その出店のメリットについても紹介します。
高い人気が今後見込める
Temuは、発祥のアメリカではZ世代や高年齢層であるベビーブーマー世代を中心に、既におなじみのECサイトになっています。
Temuが米国で大ブレイクをしたきっかけは、国民的スポーツであるスーパーボウルでCMを何回も流したことだといわれています。広告費が特に高額とされる国民的スポーツイベントに出稿したことで、知名度を急上昇させたことがブレイクにつながっているのです。
日本でも、2023年7月にTemuのサービス利用が開始され、1年を待たずに登録ユーザーが1,500万人を突破しています。若年層だけでなく、米国と同様に高年齢層など幅広い年代にも今後浸透することが期待できます。
販路拡大が進展している
国内で既に出店や自社サイトといった、いわゆるECサイトでの事業に取り組んでいる事業者にとって、販路の拡大は特に重要な課題となっています。
Temuでは、国内での楽天やアマゾンなどとは、異なる消費者層が期待できます。このような消費者にアプローチすることは、販路の新規開拓にもつながります。
モールや自社サイトで一定の成果を収めているECショップにとっては、さらなる販路拡大が期待できます。また今までは成果をあげられていないショップでも、Temuの消費者層とマッチして、あらたな良い影響が生じるかもしれません。
グローバル展開も見込める
Temuでは、グローバル展開が見込めるというメリットもあります。とくに国内EC事業者で、海外展開を今後考えている事業者にとっては、手軽に利用できるプラットフォームです。
Temuには、既に世界で4億6千万人を超えるユーザーがいるといわれています。国内のEC市場に比べれば非常に多くのユーザーがいることになります。利用者数1500万人といわれるTemuの日本向けサイトを足がかりとして、世界展開を目指して自社のEC事業を広げていける可能性もあります。
出店登録者は無料で開始できる
Temuにて、出店を実施するための事業者登録には、費用は一切かかりません。
商品が売れた場合だけに、販売手数料が発生する仕組みをとっています。このため、出店したものの全く売れずに、出店初期によくある、事業者側では赤字になってしまうというリスクを大幅に低減させることができます。
<h2>Temu出店のデメリット</h2>
Temu出店のメリットについて紹介しましたが、出店時のデメリットについても解説します。
サイト内での価格競争が激しい
Temuのデメリットとしては、まずサイト内での価格競争が激しいことがあげられます。
Temuでは、低価格が特徴となっており、内外で成長する要因ともなっています。常にバーゲンのような低価格商品が並んでいるほか、タイムセールなどの仕掛けを継続しており、消費者の購買意欲を書き立てるような雰囲気を醸成しています。
このためTemuの利用者には、ディスカウントストアのようなワクワク感などを期待して利用している消費者が多いと推定されます。新たに出店した事業者が、成果を上げるためには、まず低価格商品が必要になります。とくにTemuに並んでいるような同等レベルの商品では、低価格が武器となりますし、また商品特性の差別化などにも取り組むことが大切です。
返品時の対応コストがかかる
Temuは、返品対応時には、消費者サイドの側をとくに考慮しています。
返品可能な商品は初回の返送料が無料ということもあり、他のサイトと比較しても、期間内であれば返品が発生しやすくなっています。このため、国内の他のサイトでの経験をもとに考えていると、返品の程度が想定した以上になる可能性があります。
Temuでは、基本的には購入日から90日以内の返品は無料で、1点または複数の商品の初回返品は無料としています。ただし一部には、返品不可を指定している商品もあります。たとえば、着用済みの衣料品、洗濯済みのもの、損傷のあるもの、タグ、包装、衛生ステッカーが取り外されたもの、セットが不完全な商品などは、返品不可とされています。
ブランドイメージ低下の可能性がある
Temuに国内事業者が登録すると、事業者のブランドイメージ低下の可能性もあります。
日本国内でサービス開始してからまだ日が浅く、国内ではTemuに対する評価がまだ定まっていません。このため、低価格を前面に押し出しているTemuに出店するのは、これまでの自社ブランドイメージを低下させる可能性が高くなります。
Temuへの出店方法
Temuへの出店方法についても、以下にまとめておきます。
基本的には、グーグルなどでのショップ情報登録を少し厳格にした手順や内容となっています。日本国内の登録事業者であれば、サイト側からの招待などはなくても、登録申請が可能です。
事業者登録をおこなう
Temuの登録センターにアクセスして、事業者情報を登録します。なお個人および法人企業ともに、同社のプラットフォームに登録が可能です。
必要書類の提出をおこなう
事業者のアカウント、さらに事業ライセンスや税務情報などの必要書類をアップロードします。
審査をうける
Temu側で、国内事業者からの提出情報に基づき、審査が実施されます。
ストアカテゴリーを設定する
審査が承認されたら、ショップ名やロゴデザイン、自社の連絡先情報などを登録します。
カテゴリーなどの情報は、商品が実際に紹介される際に、どの分野で紹介されるかなどを決定するので、とくに重要です。なお登録時の費用は無料です。
商品を出品する
上記設定後、ようやく自社ショップ内に実際の商品を登録・掲示できます。なお、商品販売額に応じた手数料の納付が、商品販売後に必要です。
Temu側の消費者対策
Temu出店をふまえた消費者対策についても見ておきましょう。
現在、中国国内では多くの消費者が、越境 Eコマースを通じて海外商品を購入しています。それとともに製品品質が低い、入荷の周期が長く、返品や交換サービスが難しいなどの一連の問題も生じています。このため関連する苦情も、かなりの頻度で増加している状態です。
これらの消費者問題を少しでも軽減するため、Temuでは以下の消費者支援や安全対策を実施しており、日本からの出店者側でも対応が必要となる場合があります。
幅広い決済に対応
Temuは、かなりの決済サービスとも提携しており、消費者側で選択の余地があります。
Temuの支払い方法では、代引きは対応していないものの、クレジットカードや事前支払方法などの幅広い決済と連携しています。ただし、楽天ペイやLINE PayのようなQRコード決済には、基本的には対応していません。
購入者保護プログラム
Temuでは、購入者保護プログラムがもうけられています。
商品に不備があった場合に手厚くサポートしてくれるプログラムが設けられており、不良品や注文と異なる商品が届いた場合は返金の対象になります。出店者側でも、それに対する対応、とくに返品対応が必要となることがあります。
以下に、返品対応可能な対象品を記載します。
商品ページの説明や写真と一致しない商品が届いたり、商品が破損している、商品自体が届かない、配送が遅延している場合や、さらには配送中の紛失などがあげられます。
まとめ
Temuへの出店について、その出店方法からはじまり、メリットやデメリット、さらには消費者対策まで紹介しました。
米国などの海外で爆発的な人気のあるTemuですが、日本国内の事業者からも出店への検討の声もあがっています。ただサイト内での価格競争は厳しく、商品購入者への対応策などの準備も必要です。