在庫管理の効率化を図りたいと考えながらも、システム導入のコストが課題となっているケースは少なくありません。実は、Excel・Access・Pythonを使えば、在庫管理システムを自作できます。
本記事では、各ツールを使った在庫管理システムの自作手順について、解説します。自作時の注意点や構築のポイントも紹介しますので、コストを抑えながら自社に合ったシステムを構築したい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の結論
- 在庫管理システムはExcel・Access・Pythonなど複数の方法で自作が可能
- 自作の最大のメリットは初期コストの削減と、自社の業務に合わせた高いカスタマイズ性
- データ量や利用人数、担当者のスキルに応じて適切な構築方法を選択する必要がある
在庫管理システムとは
在庫管理システムは、商品の入出庫を記録し、倉庫や店舗における在庫状況を正確に把握するための仕組みを指します。欠品や余剰在庫の発生を防ぎ、適正な在庫量を維持することで、ビジネスの効率化とコスト削減が可能です。手作業による在庫管理では、作業ミスや在庫数のズレが発生しやすく、現場の業務負担も大きくなりがちです。
在庫管理システムの基本
在庫管理の精度が低いと、販売機会の損失や過剰在庫による資金繰りの悪化につながります。システムを活用すれば、「今、どの商品がどこにいくつあるか」を一目で把握できるようになり、発注タイミングの明確化も可能です。
また、在庫管理システムにはバーコード読み取り、在庫アラート、入出庫履歴の記録など、さまざまな機能があります。自社の業務内容に応じて必要な機能を選定し、システムを構築することが求められるでしょう。
在庫管理システムが必要な理由
手作業での管理は、数え間違いや記録漏れが頻繁に発生します。また、紙やメモでの管理では情報の共有が難しく、複数拠点での在庫状況の把握は困難です。システム化することで、リアルタイムでの在庫把握と正確なデータ管理が実現し、キャッシュフローの改善やサービス品質の向上にもつながります。
Excelを使った在庫管理システムの自作方法
Excelは多くの企業で日常的に使用されているため、簡易的なシステムであれば手軽に自作できます。
無料テンプレートの活用
Microsoft公式サイトやビジネス支援サイトでは、在庫管理表のテンプレートがさまざまな種類で公開されており、用途に応じて選択できます。これらは基本的な関数や書式が設定されているため、初心者でも導入しやすいのが特徴です。
Excelの関数を使った構築手順
シートの列に「日付」「入庫数」「出庫数」「在庫数」「担当者」などの項目を設定します。
- 計算式: 在庫数の列に「
=前の行の在庫数 + 今日の入庫数 - 今日の出庫数」と入力。 - IF関数: 在庫が一定数を下回った際に警告を表示。
- VLOOKUP関数: 商品コードから商品名や単価を自動表示。
Excelマクロによる高度な機能の実装
関数では実現が難しい複雑な処理は、Excelのマクロを使用することでシンプルに実現できます。ボタン一つでの月次レポート生成や、在庫アラートのメール送信も可能です。
Excelで自作するメリットとデメリット
- メリット: 追加の導入コストがかからない、教育コストが低い、短期間で作成可能。
- デメリット: 大量データ(数万件以上)で動作が重くなる、複数人での同時更新ができない、ファイルの破損リスク、属人化しやすい。
快適に利用できる目安: 1シートのデータ量1万件程度、利用人数5名以下、営業拠点1カ所が目安です。月間の入出庫が1,000件を超える場合は、次のステップ(AccessやPython)を検討しましょう。
Accessを使った在庫管理システムの自作方法
Accessは、Microsoft Officeに含まれるデータベースソフト(RDBMS)です。Excelよりも大量のデータを安全かつ高速に扱えるように設計されています。
Accessの特徴とExcelとの違い
Accessは、複数のテーブルを関連付けることでデータの重複を防ぎ、整合性を保ちます。
- 同時アクセス: 理論上は最大255人まで同時アクセス可能ですが、安定運用の目安は10〜20名程度です。
- クエリ機能: 複雑な条件での検索や集計もスムーズに行えます。
Accessの設計と主要機能
- テーブル設計: 「商品マスタ」「在庫テーブル」「入出庫履歴」を作成。
- リレーションシップ: 商品IDをキーとして各テーブルを紐付け。
- フォームとレポート: 入力画面(フォーム)を作成し、出荷伝票や在庫一覧を帳票(レポート)として出力。
Pythonを使った在庫管理システムの自作方法
Pythonは、初心者にも扱いやすく、拡張性が非常に高いプログラミング言語です。
Pythonが適している理由
- 高度な分析: Pandasなどのライブラリを使い、需要予測や最適発注量の算出が可能。
- Web化: FlaskやDjangoを使えば、ブラウザから利用できるWeb版システムが構築でき、OSを問わず利用可能です。
- 外部連携: QRコードスキャンやIoT機器との連携も得意です。
基本的な構築手順
Pythonでは、商品クラスを定義する「オブジェクト指向」での設計が効率的です。データの保存には、SQLiteなどの軽量データベースを活用するのが一般的です。
在庫管理システムを自作する際の重要なポイント
自作に踏み切る前に、以下の3点を整理しましょう。
- 導入目的の明確化: 「記録ミスを防ぐ」「過剰在庫を減らす」など、解決したい課題を絞り込みます。
- 業務フローの可視化: 現状の入出庫作業をフローチャートにし、どのタイミングでデータ入力が必要かを確認します。
- 機能の見極め: 「あったら便利」な機能は後回しにし、まずは「なければ困る」最小限の機能(MVP)から着手します。
自作が難しい場合の対処法
自社にエンジニアがいない、あるいは開発リソースが足りない場合は以下の選択肢があります。
- 外注: プロのシステム開発会社に依頼し、長期的な保守を含めて任せる。
- SaaS:自社の商材に合うSaaS型の在庫管理システムであれば、外注で1から作るよりも安い費用で早く導入することができます。ただし、カスタマイズが難しい場合があるため、慎重にツールを選ぶ必要があります。
- ノーコードツール: AppSheet などのツールを使えば、プログラミング未経験者でもスプレッドシートを元に、スマートフォンで使える本格的な在庫管理アプリを作成できます。
まとめ
小規模ならExcel、中規模や複数人利用ならAccess、高度な予測やWeb共有が必要ならPythonやノーコードツール、という選択がおすすめです。自社の課題に合わせて最適な手段を選び、ビジネスをさらに発展させていきましょう。


