WMS（Warehouse Management System）は、今日の複雑化した物流課題を解決し、企業の競争力を高めるために不可欠なシステムです。本記事では、「WMSとは何か」という基本的な定義から、その具体的な機能、導入によって得られるメリット、そして他のシステムとの違いに至るまで、網羅的に解説します。
WMSとは？その定義と倉庫における役割
WMSの主な機能
WMSとは、「Warehouse Management System」の頭文字を取った略語で、日本語では「倉庫管理システム」と呼ばれます。
これは、物流倉庫内の一連の作業を効率化し、一元的に管理するためのソフトウェア・ソリューションです。具体的には、入荷、在庫、流通加工、帳票類の発行、出荷、棚卸など、倉庫で行われる作業の全体をデジタルで最適化します。
近年、物流現場における人手不足や、多様化する消費者ニーズ（オムニチャネル化など）への迅速な対応力が求められる中で、WMSは、物流における標準化を目指す「物流DX」の中核を担う重要な基盤システムとして注目されています。
WMSが担う2つの大きな役割
WMSは、倉庫内の物流業務において主に以下の2つの重要な役割を担います。
1. 倉庫内の実在庫管理とリアルタイムな状況把握
WMSの最大の役割の一つは、販売・生産などの基幹システムやOMS（受注管理システム）で管理される「理論在庫」ではなく、倉庫内の現物である「実在庫」を管理することです。入出荷作業の動きに合わせてリアルタイムで在庫を詳細に把握し、倉庫内の在庫状況を明確にします。
2. 物流業務の標準化と効率化
入荷や保管、ピッキング、検品、梱包、出荷、棚卸などの一連の物流業務で、正確かつスピーディーな作業を実現するための機能を備えています。ハンディターミナルや送り状発行システム、最近では物流ロボットなどのマテハン機器との連携を通じて、生産性向上に貢献します。
WMSとは、倉庫内の在庫を管理し、出荷依頼を基に、効率よく倉庫から出荷するためのシステムです。
OMSとの違いは？
OMS（Order Management System）は、「受注管理システム」のことを指し、OMSとWMSはいずれも物流に関連するシステムですが、それぞれ目的と機能は異なります。
OMSは顧客からの注文を一元的に管理し、注文の受付から物流倉庫側への出荷指示など受注から発送指示までの物流倉庫に渡すまでのプロセスを効率化するためのシステムであることが一般的です。
複数のECモールやカートに出品・出店している場合、受注処理業務が複雑になってしまいますが、OMSを利用することにより効率的に処理できるようになります。
一般的にはOMSはEC事業者側が導入するシステムであり、WMSは自社で倉庫を持っているEC事業者や、倉庫事業者側が導入するシステムです。
※OMSについては下記の記事で細かく解説していますので、気になる方はぜひご一読ください。
WMSの主な機能一覧
- 入荷管理機能
- 商品の入庫スケジュールや入庫商品の検品、ロット情報の管理ができます。
- 在庫管理機能
- どの商品が、どこに、いくつ保管されているかという基本情報や荷姿、賞味期限、ロットなどの詳細情報も含めて一元管理ができます。OMSなどと連携して在庫をリアルタイムで管理できるものもあります。
- 出荷管理機能
- 出荷依頼に基づき、商品の取り出し、梱包、出荷作業を効率化します。先入れ先だしや期限、ロット管理などのルールに基づき最適な出荷指示を行い、ハンディターミナル等を活用することで、出荷指示通りにできているかなどのミスの抑制にもなります。
- ロケーション管理機能
- 倉庫内の保管場所を記録し、在庫がどの場所にあるのかを簡単に把握することができます。
- ピッキング最適化機能
- 出荷指示があった商品を効率よくピックするためのロケーションを考慮したピッキングリストを出力できます。これにより、倉庫内で行ったり来たりするなどの無駄な作業や探す手間を減らすことができます。
- トレーサビリティ管理機能
- 出荷時にシリアル番号を記録する機能などがあり、リコール発生時などの対応を円滑にできます。
- 帳票・ラベル発行機能
- 納品書や発注書、帳票や送り状などの発行ができます。
WMSを導入する3つのメリット
WMSを導入することで、物流現場の抱える様々な課題（誤管理、誤出荷、人手不足、属人化など）を解決し、物流全体の品質改善と作業の標準化を実現することができ、結果的に人件費やミスの補填などのコストを削減することができます。
人的ミスを最小化し、物流サービスの品質を向上できる
倉庫業務は単調な作業が多く、目視や手入力では人為的なミスが避けられません。WMSはハンディターミナルと連携してスキャン検品を行うことで、人為的な入力ミスを防止します。また、先入れ先出しや期限管理など、届け先ごとのルールを踏まえた最適な指示を出すことができるため、ベテランの業務知識に依存することなく、物流サービスの精度を向上することができます。
物流業務を効率化し、標準化できる
WMSの導入により作業内容が標準化され、誰でも一定の水準で業務を遂行できるようになります。これにより、アルバイトやパート、タイミーなどのスポットで働く方でも即戦力化が容易になり、人材育成にかける時間も短縮されます。また、返品のようなイレギュラーな在庫変動への対応も、WMSの返品管理機能を活用することで短時間で処理でき、煩雑な業務の効率化も解消されます。
在庫や作業状況をリアルタイムで可視化できる
ハンディターミナルとの連携により、各作業の進捗状況や在庫情報がリアルタイムで可視化されます。これにより、データ上の在庫と実際の在庫とのズレを防ぎ、過剰発注や在庫切れといったトラブルを回避できます。管理者はパソコンやスマートフォンで状況を把握できるため、出張先など現場から離れた場所にいても具体的な指示が出せるようになり、営業部門や顧客への問い合わせにも迅速に回答することが可能になります。
WMSの導入によって、業務の効率化と標準化、ミスの削減が期待でき、結果的に人件費などのコスト削減や配送リードタイムの短縮に伴う顧客満足度の向上につながります。
WMSを導入するデメリット
WMSを導入し業務を効率化するためには、メリットだけでなくデメリットもきちんと理解する必要があります。
導入コストがかかる
WMSを導入するにあたっては、導入コストが一つの大きな検討ポイントとなります。
WMSの導入コストは、システムの購入費用、カスタマイズ費用、運用・維持費用など、さまざまな要素から成り立ちます。様々な企業がWMSを提供しており、その料金形態も提供企業によって大きく異なります。WMSを導入する前に、導入費用と導入によるメリットを総合的に判断することが必要です。
ちなみに、弊社ロジレスが提供する「LOGILESS」はOMS・WMS一体型のシステムとなっており、WMSとしての基本使用料は0円となっています。既に200社以上の倉庫事業者様にて「LOGILESS」のWMSを利用していただいており、1500社以上のEC荷主様にもご利用いただいておりますので、ぜひご検討いただけますと幸いです。
導入に負担がかかる
新しいシステムを導入するとき、重要な課題の一つとして「慣れる時間」が挙げられます。WMSを導入するにあたり、基本的な操作方法、機能の使い方、問題が発生したときの対処法などを理解する必要があります。
そして、使いこなせるようになるまでには、一定の「慣れる時間」が必要となります。新しいシステムを導入すると、初めのうちはむしろ業務速度が落ちることもあります。
ただし、WMSなどのシステムの導入は長期的な視点で検討することが重要です。困ったときにいつでも相談できる業者を選定し、導入までのサポートが充実しているかどうかも併せて検討する必要があります。
最適なWMSの選び方
WMSを導入する際は、機能面だけでなく、提供形態やサポート体制、連携性といった複数の観点から検討することが重要です。
既存システムとの連携性や拡張性
WMSは倉庫内だけで完結するシステムではありません。特に、下記のシステムとは連携が重要になりますので、現在使用しているものとの連携性を確かめる必要があります。
- 受注管理システム（OMS）との連携
- 特に出荷件数が多くなるEC事業者向けの物流倉庫においてはOMSとの連携が重要になります。基本的に主要なOMSと連携ができるWMSが多いものの、「連携しているが在庫のズレが発生しやすい」「データの送受信に時間がかかる」「連携するために手作業が必要になる」などの課題が生じる場合があるため、単に連携できるかではなく、作業負荷をかけずに、正確にデータの送受信をOMSとWMSの相互にできるかを確認する必要があります。
- 送り状発行システムとの連携
- ヤマト運輸や佐川急便などの送り状発行システムと連携できると送り状を自動で発行することができるようになります。手入力や手書きによるミスをなくすことができるため、今使っている送り状発行システムと連携できることは必須条件です。
「LOGILESS」はOMSとWMSが一体型になっているため、一般的なOMSとWMSをAPIで連携するパターンに比べて在庫ズレのリスクなどシステム連携に伴うリスクが少ないことが特徴です。また、送り状発行システムについても、佐川やヤマト運輸、西濃運輸、日本郵便などのシステムと連携が可能です。
サポート体制はしっかりしているか
導入前後のトラブル対応やシステムのアップデート、操作研修、マニュアル提供など、ベンダーのサポート体制が充実していることが、スムーズな運用のカギを握ります。初めて導入する場合は、自社の業界での導入実績や、業務フローを整理してくれるコンサルティング支援があるかを確認しましょう。
クラウド型かオンプレミス型か
WMSの導入形態は「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。
クラウド型はクラウド上にあるシステムにインターネットでアクセスして利用するため、どこからでもアクセスすることが可能です。SaaSとして必要な機能がパッケージ化されており、一般的にオンプレミス型よりも初期費用や月額の費用を抑えることができます。
一方でオンプレミス型は、自社内のサーバーにシステムを導入するため、導入費用が高くなってしまう傾向がありますが、運用や保守、カスタマイズも可能であり、複雑な独自の物流プロセスを持つ企業にとっては適している場合があります。
WMSに限らず、新しいシステムにはコストや負担がかかる場合が多いため、機能だけでなくサポート体制なども併せて検討が必要です。
LOGILESSのご活用事例
株式会社富士ロジテック様
LOGILESS導入前に抱えていた課題
D2Cの急成長にあわせて、BtoB物流からBtoC物流へ本格参入を決定。倉庫作業において人手不足が続く中、臨機応変なオペレーションが求められるEC・D2Cに対応するためにこれまでのシステムと業務フローを見直す必要があった。
LOGILESS導入の効果
・LOGILESSは条件に応じた自動処理が簡単に設定できるため、一人ひとりに別々の梱包物を入れるなどパーソナライズされた物流が可能に。
・さらに、OMS＋WMS一体型でリアルタイムに出荷指示が届くため、手待ち時間がなくなり業務工数を約2割削減。
株式会社低温様
LOGILESS導入前に抱えていた課題
・既存WMSでは操作の不明点があった場合、情報を調べるのに時間がかかり作業が止まる
・既存WMSがシステム障害により利用できなくなり、代替WMSによる早急な復旧が必要
LOGILESS導入の効果
不明点をサポートチャットですぐに解決できるようになり、作業が止まらなくなった。また、EC荷主様への導入も迅速であり、短期間で普及できた。
株式会社エクシーク様
LOGILESS導入前に抱えていた課題
事業拡大に伴う出荷件数の急増により、倉庫作業のミスが増加。複数のWMS（倉庫管理システム）を活用してオペレーションの立て直しを試みるも、必要な機能が揃っておらず、求める水準の出荷オペレーションを実現できなかった。
LOGILESS導入の効果
LOGILESSの直感的なUIとミス防止機能により、新人スタッフでもベテランスタッフと同水準のオペレーションが可能になり、出荷作業が安定し、出荷スピードは2〜3倍になった。
WMSが切り拓く未来の物流
現在の物流業界は、深刻な人手不足とサプライチェーンの複雑化という課題に直面しています。WMSはこれらの課題を乗り越え、物流を他社との差別化ポイントとするために不可欠な要素となりつつあります。
従来のWMSが「品質向上、効率化、標準化」といった業務改善に重点を置いていたのに対し、今後はWMSに蓄積された情報をKPIとして活用し、「情報活用」「収益性の向上」「継続性」といった経営課題の改善へ繋げることが求められています。
物流ロボットやAIなどのデジタル技術の活用が進む中で、WMSはそれらのDXに対応できるシステムである必要があります。導入においては、システムを入れることだけでなく、「自社の物流はどうあるべきか」という業務設計をパートナーと共に行うことが、成功への重要なステップとなります。
WMSは、まるでオーケストラの指揮者のように、倉庫という舞台における入荷・保管・出荷という様々なパートの動きをリアルタイムで把握し、最適なタイミングで正確な指示を出し、全体のパフォーマンス（生産性、品質）を最大限に引き上げる役割を担っています。これにより、現代の複雑化する消費者ニーズに対応し、柔軟で迅速なサプライチェーンが実現します。
まとめ
WMSを導入することによって、複雑な倉庫業務の効率化やコスト削減、そして物流業務品質の向上が期待できます。
その一方で、導入コスト、慣れるまでの時間、自社のニーズにマッチするのかなどを考慮し、自社に最適なWMSを選ぶことが重要です。
最後に、当社が提供しているLOGILESSは、この記事で紹介したWMSの機能だけでなく、ネットショップ側が利用するOMSも一体型のシステムとなっています。EC荷主側と倉庫側が一つのシステムを利用することになるため、受注から出荷までの業務を一貫して効率化・自動化するため、ミスなくスピーディな出荷が実現できます。
もしLOGILESSのWMS機能やオプションプランの「LOGILESS Plus」について気になる方は、こちらからお問い合わせください。
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