受発注業務を電話やFAXで対応しており、担当者の負担が大きいと感じている企業は少なくないでしょう。BtoB ECを活用すれば、そうした課題を解消しながら業務効率化と販路拡大を同時に実現できます。本記事では、BtoB ECの基本的な定義と仕組み、BtoC ECとの違い、導入メリット・デメリット、さらにシステム選定のポイントまでわかりやすく解説します。
この記事の結論
- BtoB ECとは企業間の受発注をWeb上で完結させる電子商取引の仕組みで、2024年の国内市場規模は514兆4,069億円(前年比10.6%増)に達している
- BtoC ECとは異なり、取引先ごとの価格管理・決済管理・商品の出し分けといった企業間特有の機能が必要になる
- クラウド型・パッケージ型・フルスクラッチ型から自社の規模や予算に合った構築方法を選ぶことが、導入成功の鍵となる
BtoB ECの基本を理解しよう
BtoB ECの定義と類似概念との違いを見ていきましょう。
BtoB ECとは何か
「BtoB」は「Business to Business」の略で、企業間取引を意味します。これに「EC(Electronic Commerce:電子商取引)」を組み合わせたBtoB ECとは、メーカーと卸売業者、卸売業者と小売店など、企業同士がインターネット上のWebサイトやシステムを通じて商品・サービスの売買を行う仕組みを指します。
従来は電話・FAX・対面営業で行っていた受発注業務をデジタル化することで、業務効率化やコスト削減、販路拡大が期待できるでしょう。
BtoB ECの主な機能を整理すると、以下の通りです。
| 機能 | 概要 |
| 商品カタログ公開 | 取引先企業向けにWebサイト上で商品情報を掲載する |
| オンライン受発注 | Web画面から注文・見積もり依頼を受け付ける |
| 価格・在庫連携 | 他システムとリアルタイムで情報を同期する |
| 承認ワークフロー | 企業内の承認プロセスをシステム化する |
なお、楽天やAmazonのように企業が一般消費者向けに販売する「BtoC EC」、メルカリ等を介した個人間取引の「CtoC EC」、自社従業員向けの「BtoE EC」とは区別して理解する必要があります。
BtoB ECとEDIの違い
BtoB ECと混同されやすいのがEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)です。EDIとは、企業間で発生する受発注や請求などの定型的な業務データを、専用回線を通じて標準化されたフォーマットで電子的にやり取りするシステムで、1970年代後半から存在し、1980年代に業界標準化が進み、1990年代に急速に普及しました。
BtoB ECとEDIの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | EDI | BtoB EC |
| 主な用途 | 定型的な大量取引の自動化 | 受発注のデジタル化・新規顧客開拓 |
| 通信方法 | 専用回線(ISDN等) | インターネット(Webブラウザ) |
| 導入コスト | 高い(専用システム構築が必要) | 比較的低い(SaaS型なら手軽) |
| 柔軟性 | フォーマットが固定的 | 商品検索・見積もりなど柔軟に対応 |
| 新規顧客開拓 | 既存取引先向け | 新規顧客開拓にも活用可能 |
| マーケティング | 限定的 | Web広告・SEO等と連携可能 |
従来のEDIで使用されていたISDN回線(INSネット)は、2024年8月に新規販売が終了しており、2028年12月にはサービス提供も完全終了する予定です。このため、Web-EDIやBtoB ECシステムへの切り替えを急ぐ企業が増えています。
BtoB ECの市場規模
ここでは、市場データと成長を支える要因を見ていきましょう。
国内市場規模とEC化率の現状
経済産業省が2025年8月に公表した「令和6年度 電子商取引に関する報告書」によると、2024年の国内BtoB-EC市場規模は514兆4,069億円(前年比10.6%増)でした。商取引全体に占めるEC化率は43.1%で、前年から3.1ポイント増加しています。
同年のBtoC-EC市場規模は26兆1,225億円で、BtoB-EC市場は約19.7倍の規模になります。業種別に見ると、市場規模が最も大きいのは「卸売」の128兆8,684億円(前年比6.3%増)で、EC化率が最も高いのは「輸送用機械」の88.6%です。成長率の面では「運輸」が前年比20.1%増、「建設・不動産業」が同18.2%増、「食品」が同17.0%増と続いており、幅広い業種でデジタル化が進んでいます。
コロナ禍が加速させたデジタル化の定着
2020年以降、コロナ禍により非対面・非接触の需要が急増し、企業間取引においても在宅でも処理できるBtoB ECの導入が加速しました。コロナ禍収束後もこの流れは定着しており、Web上での企業間取引は特別なことではなくなっています。
人手不足と働き方改革への対応
少子高齢化による労働力不足が深刻化するなか、限られた人員で業務を回す必要性が高まっています。BtoB ECは受発注業務の自動化により、営業活動や企画業務など付加価値の高い仕事に人的リソースを振り向けることが可能です。
政府のDX推進政策
経済産業省を中心に各種デジタル化推進政策が展開されており、中小企業向けのIT導入補助金なども整備されています。こうした支援策がBtoB EC導入の下支えになっています。
参考文献のサイト
ISDN回線終了によるEDI移行需要
従来のEDIで使用されていたISDN回線が2028年12月に完全終了することを受け、Web-EDIへの切り替えにとどまらず、より柔軟なBtoB ECシステムへの移行を検討する企業も増えているのです。
BtoB ECとBtoC ECの機能面の違い
企業間取引特有の機能要件について、見ていきましょう。
取引先ごとの価格(掛率)管理
BtoC ECでは全ユーザーに同一価格で販売するのが一般的(一物一価)ですが、BtoBでは取引量や取引実績・各種条件によって取引先ごとに異なる価格を設定することが当たり前です。そのためBtoB ECシステムには、グループ単位や個社単位で掛率(割引率)を設定し、ログインユーザーに応じて適切な価格を表示する「一物多価」の機能が必要です。
取引先ごとの決済管理
BtoBでは「掛け売り(請求書払い)」が主流で、月末締め翌月末払いなど一定期間の取引分をまとめて後払いする方式が広く採用されています。BtoB ECシステムには、与信状況に応じて取引先ごとに利用可能な決済方法を設定・制限できる機能が求められます。
新規取引先には前払いや代引きのみを許可し、与信審査を通過した取引先には掛け売りを適用するといった運用が可能です。
取引先ごとの販売商品管理
取引先によって販売できる商品が異なるケースも少なくありません。特定の取引先向けのOEM商品、大口取引先のみに販売する特別価格商品、取り扱いに免許が必要な商品などが代表例です。
BtoB ECシステムは、取引先ごとに商品の表示・非表示を設定し、適切な商品だけを見せる機能を備えています。
BtoC ECとBtoB ECの機能面を比較すると以下の通りです。
| 項目 | BtoC EC | BtoB EC |
| 価格設定 | 全ユーザーに同一価格(一物一価) | 取引先ごとに異なる価格(一物多価) |
| 主な決済方法 | クレジットカード・コンビニ払いなど | 掛け売り(請求書払い)が主流 |
| 商品管理 | 全ユーザーが閲覧・購入可能 | 取引先ごとに表示商品を出し分け |
| 見積もり機能 | 基本的に不要 | 社内承認プロセスのために必要 |
| 発注単位 | 1個単位が基本 | ロット・ケース単位での販売が一般的 |
この表のように、BtoB専用の機能は多岐にわたります。掛け売りの場合は未回収リスクや与信管理の負担が生じるため、取引先の状況に応じた決済設定が必要です。
BtoB EC導入のメリットとデメリット
導入による効果と注意点を解説します。
業務負担の大幅な軽減
従来の電話・FAXによる受発注業務では、在庫問い合わせへの対応、受注内容の手入力、請求書処理など多くの工数がかかっていました。BtoB ECを導入すると、商品情報や在庫状況を取引先が自身で確認できるようになり、問い合わせ対応の負担が軽減可能です。
ECサイトは24時間365日稼働するため、営業時間外の注文も自動で受け付けられます。
ヒューマンエラーとコストの削減
電話での聞き間違いやFAXの読み取りミス、手入力時の誤入力は、誤発注や誤出荷につながり、クレーム対応など追加の工数を生みます。BtoB ECでは取引先自身がWeb画面上で商品を選択・数量入力して発注するため、伝達ミスを大幅に削減できるでしょう。
新規顧客の獲得
オープン型やセミクローズド型のBtoB ECサイトを運用することで、営業担当者がこれまでアプローチできなかった遠方の企業や小口の取引先との接点が生まれます。Web広告やSEO対策と組み合わせれば、特定の商品を探している企業からのアクセスを獲得し、新規取引につなげることも可能です。
営業人員を増やさずに販路を拡大できる点は、EDIにはないBtoB EC固有の強みです。
データ活用による経営戦略の強化
BtoB ECを導入すると、取引先の購買データがシステム上に蓄積されます。「どの取引先が、いつ、どの商品をどのくらい購入しているか」を分析することで、需要予測の精度向上や在庫の最適化、取引先ごとにパーソナライズした提案が可能になります。
データを経営判断の基盤として活用できる点は、長期的な競争力の強化につながるでしょう。
導入コストの発生
BtoB ECシステムの導入には初期費用と月々の利用料が発生します。社内業務フローの見直しや商品データの登録など、準備段階での工数も考慮が必要です。
近年はクラウド型サービスが充実しており、大規模な開発なしに比較的低コストで導入できる選択肢も増えています。
既存顧客への移行サポートが必要
長年電話やFAXで発注してきた既存顧客のなかには、ECサイト経由での発注に抵抗を感じる方もいます。スムーズな移行には操作マニュアルの整備やデモ説明、問い合わせ窓口の設置など、きめ細かなフォローが欠かせません。
「24時間いつでも注文できる」「過去の注文履歴から簡単に再発注できる」など、取引先側のメリットを丁寧に伝えることが移行促進につながります。
BtoB ECシステム選定のポイント
ここでは、導入を成功させるための選定基準を見ていきましょう。
構築方法の3つの選択肢
BtoB ECサイトの構築方法は、自社の規模・予算・必要な機能によって大きく3つに分かれます。
| 構築方法 | 初期コスト目安 | カスタマイズ性 | 向いている規模 |
| クラウド型 | 数万円~数十万円 | 制限あり | 中小企業・スモールスタート |
| パッケージ型 | 数百万円~数千万円 | 部分的に可能 | 中~大規模企業 |
| フルスクラッチ型 | 数千万円~数億円 | 完全自由 | 大企業・独自要件が多い場合 |
クラウド型は初期費用を抑えて短期間で導入できる反面、カスタマイズに制限があります。フルスクラッチ型はどのような要件にも対応できますが、開発費用が数千万円~数億円規模になることもあるため、主に大企業向けの選択肢です。
BtoB特有の機能が揃っているかを確認する
システム選定時は、顧客ごとの価格設定(掛率管理)・決済方法の管理・販売商品の出し分け・見積もり機能といったBtoB特有の機能が備わっているかを確認します。BtoC向けECシステムをBtoB取引に転用しようとすると、大幅なカスタマイズが必要になり、結果的にコストや工数が増えるケースが多くなります。
BtoB専用に設計されたシステムを選ぶことが、導入後のミスマッチを防ぐうえで重要です。
既存システムとのスムーズな連携
多くの企業ではすでに販売管理システムや在庫管理システムなどの基幹システムを運用しています。 BtoB ECシステム導入にあたっては、API連携やCSVによるデータ連携に対応しているか、どのような基幹システムとの連携実績があるかを事前に確認しましょう。
連携が不十分だと、ECサイトの受注データを手作業で基幹システムへ入力し直すことになり、業務効率化の効果が半減してしまいます。
なお、物流管理システム「LOGILESS」はBtoB ECプラットフォーム「Bカート」とAPI連携が可能です。 連携を有効にすると、Bカートの受注情報(対応状況が「新規注文」のもの)がLOGILESSへ約10分間隔で自動取り込みされ、LOGILESSからBカートへ配送会社・送り状番号・出荷日の出荷情報も約10分間隔で自動送信されます。在庫数の連動も約10分間隔で自動連携されるため、在庫管理と受発注管理を一元化した運用が実現可能です。
サポート体制の充実度を確認する
BtoB ECシステムは導入後も継続的に運用していきましょう。導入時の支援はもちろん、運用開始後のトラブル対応や機能に関する問い合わせへの対応など、サポート体制が充実しているかどうかは重要な選定基準です。
問い合わせ方法(電話・メール・チャット等)や対応時間、ヘルプドキュメントの充実度を事前に確認することを推奨します。
まとめ
BtoB ECとは企業間の受発注業務をWeb上で完結させる電子商取引の仕組みで、2024年の国内市場規模は514兆4,069億円(前年比10.6%増)に達しています。
業務効率化・ヒューマンエラー削減・新規顧客獲得・データ活用といったメリットがある一方、導入コストや既存顧客への移行サポートも念頭に置くことが必要です。
自社の規模・予算・業務フローに合った構築方法とシステムを選ぶことが、BtoB EC導入を成功させる最初の一歩です。
なお、BtoB ECプラットフォーム「Bカート」を導入する場合、物流管理システム「LOGILESS」とのAPI連携により、受注情報・出荷情報・在庫数を約10分間隔で自動連携できるため、在庫管理と受発注管理の一元化が実現できるでしょう。

