「EC市場って今どのくらい規模があるの?」と気になっている方は多いはずです。 本記事では、経済産業省が公表した最新データをもとに、EC市場の規模・成長率・カテゴリ別の動向、さらに今後の方向性までをわかりやすく解説します。
この記事の結論
- 2024年の国内BtoC-EC市場は前年比5.1%増の26兆1225億円に拡大した
- スマートフォン経由の取引が物販系分野をけん引しており、スマホ比率は61.7%に達した
- BtoB-EC市場は514兆4069億円と、企業間取引でも電子化が急速に進んでいる
EC市場の基礎知識
ここでは、EC市場の定義と分類について見ていきましょう。
EC市場とはどういう意味か
EC(Electronic Commerce)とは、インターネットを通じて商品やサービスを売買する取引形態を指します。日本では経済産業省が毎年「電子商取引に関する市場調査」を実施しており、国内のEC市場規模や電子化率(EC化率)を継続的に把握しています。
EC市場は取引主体の違いにより、大きく3種類に分類されます。
| 種別 | 内容 | 代表例 |
| BtoC-EC | 企業から消費者への取引 | 楽天市場、Amazon など |
| BtoB-EC | 企業間の取引 | EDI、受発注システムなど |
| CtoC-EC | 消費者間の取引 | フリマアプリ、オークションサイトなど |
なかでも消費者が日常的に接触するBtoC-ECが最も知名度が高く、本記事で主に取り上げるのもこの分類です。
EC化率とは何か
EC化率とは、商取引市場全体に占めるEC取引の割合を示す指標です。この数値が高いほど、その分野においてオンライン購入が浸透していることを意味します。
2024年の物販系分野のEC化率は9.78%で、前年から0.40ポイント上昇しました。10%の大台が目前に迫っており、日本の消費行動におけるECの存在感は年々増しています。
2024年最新のEC市場規模|26兆円超えの内訳
ここでは、経済産業省の最新調査データをもとに市場規模を見ていきましょう。
BtoC-EC市場の全体像
経済産業省が2025年8月に公表した「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は前年比5.1%増の26兆1225億円でした。前年の24兆8435億円から1兆2790億円増加しており、物販・サービス・デジタルの3分野すべてが前年を上回っています。
分野別の内訳は以下の通りです。
| 分野 | 2024年市場規模 | 前年比 |
| 物販系分野 | 15兆2194億円 | +3.70% |
| サービス系分野 | 8兆2256億円 | +9.43% |
| デジタル系分野 | 2兆6776億円 | +1.02% |
| 合計 | 26兆1225億円 | +5.1% |
市場全体は堅調に成長している一方、成長率の水準や分野ごとの格差には注目すべき点があります。

物販系分野の動向
物販系分野の市場規模は15兆2194億円で、10年前の2014年比で約2.2倍に拡大しています。EC化率は9.78%に達し、小売業全体の成長率(前年比2.5%)を上回るペースで拡大を続けているのです。
商品カテゴリ別の市場規模とEC化率は以下の通りです。
| カテゴリ | 市場規模 | 前年比 | EC化率 |
| 食品・飲料・酒類 | 3兆1163億円 | +6.36% | 4.52% |
| 衣類・服装雑貨等 | 2兆7980億円 | +4.74% | 23.38% |
| 生活家電・AV機器・PC等 | 2兆7443億円 | +2.26% | 43.03% |
| 書籍・映像・音楽ソフト | − | −0.84% | (最高水準) |
「書籍・映像・音楽ソフト」は、2014年以降の物販系分野カテゴリ別で初めてマイナス成長を記録しました。紙媒体出版市場の縮小に加え、電子書籍や動画配信サービスへの移行が影響していると報告書は分析しています。

サービス系・デジタル系分野の動向
旅行予約・飲食店予約・フードデリバリーなどを含む「サービス系分野」は、前年比9.43%増の8兆2256億円で過去最高を更新しました。カテゴリ別では「旅行サービス」が3兆5249億円(+10.32%)、「金融サービス」が9890億円(+16.59%)、「飲食サービス」が9692億円(+18.70%)と伸びています。
デジタル系分野(電子書籍・動画配信・オンラインゲームなど)は前年比1.02%増の2兆6776億円でした。 分野最大のカテゴリである「オンラインゲーム」が0.58%減の1兆2553億円と3年連続でマイナス成長となっており、デジタル系全体の伸びを抑えている状況です。

スマートフォンとEC市場の関係
スマホ経由取引の急成長が市場を変えています。
スマホ経由の取引が急拡大
物販系分野におけるスマートフォン経由の市場規模は、前年比約9.0%増の9兆3904億円でした。物販系全体に占めるスマホ比率は61.7%(前年比+3.0ポイント)で、2016年比では市場規模が3.67倍に拡大しています。
スマートフォン経由の伸び幅は前年比7723億円で、物販系分野全体の伸び幅5434億円を上回っていま。パソコン経由のEC市場は前年比3.78%減とマイナスに転じており、端末別の明暗が鮮明になっているのです。

EC運営に求められるスマホ対応
スマホ経由取引の急拡大は、ECサイト運営者にとってスマートフォン対応の優先度を高める要因です。購入体験の設計においても、スマホ画面でのUI・決済フローの整備が事業成長に直結するといえます。
総務省の「家計消費状況調査」によると、2024年のネットショッピング利用世帯の割合は55.3%(前年比+1.8ポイント)に達しました。

BtoB-ECとCtoC-ECの動向
企業間取引と個人間取引の最新状況を解説します。
BtoB-ECは514兆円規模に拡大
企業間電子商取引「BtoB-EC」の2024年市場規模は、前年比10.6%増の514兆4069億円でした。EC化率は43.1%で、前年から3.1ポイント上昇しています。
業種別の主要データは以下の通りです。
| 業種 | 市場規模 | 前年比 | EC化率 |
| 卸売 | 128兆8684億円 | +6.3% | 40.3% |
| 食品 | 41兆5859億円 | +17.0% | 81.3% |
「卸売」分野では、大手GMSや大手スーパーマーケットを中心にEDI(電子データ交換)標準化が進み、EC化率の拡大につながっていると報告書は指摘しています。「食品」は、インバウンド増加による外食・ホテル需要の拡大と、原料高騰による販売価格の引き上げが市場を押し上げた要因とされています。
CtoC-ECはフリマアプリがけん引
フリマアプリやオークションサイトを中心とするCtoC-EC市場は、前年比1.82%増の2兆5269億円でした。 伸び率は前年(2023年:+5.0%)から鈍化しているものの、各プラットフォーム事業者が販促施策や利便性向上策を展開し、取引額は増加を維持しています。
AIを活用した出品支援機能や、置き配対応の新配送サービスの導入など、取引基盤の整備が進んでいる点も注目ポイントです。
越境ECの現状|海外市場への可能性
日本から海外への越境EC動向を解説します。
中国・米国向け越境ECの規模
日本から海外へ向けた越境EC(BtoC)の市場規模は、中国向けが前年比8.5%増の2兆6372億円、米国向けが前年比8.0%増の1兆5978億円でした。2カ国合計で4兆2350億円に達しており、日本ブランドへの海外需要の高さがデータに表れています。
越境EC拡大の背景には、訪日外国人(インバウンド)の増加との相関があるとされています。日本滞在時に実際に商品に触れた経験が、帰国後の越境EC利用へとつながる消費行動が観察されており、観光と電子商取引の連動が一層強まりつつあるといえるでしょう。
海外への販路拡大に向けた視点
越境ECはカテゴリによって需要の差があり、日本製品の信頼性が高い食品・化粧品・ファッションは海外消費者の関心を集めています。プラットフォーム各社も海外向け販売機能の拡充を進めており、国内EC事業者にとって越境取引は現実的な選択肢の1つになってきています。
ただし、関税・輸出規制・現地法令への対応といった実務的なハードルも存在し、参入には事前の情報収集が欠かせません。
EC市場の今後の展望
ここでは、今後のEC市場がどう変化するかを見ていきましょう。
EC化率のさらなる上昇が見込まれる
物販系分野のEC化率は9.78%で、10%の大台に迫っています。米国のEC化率が2024年時点で16.1%に達していることと比べると(2021年〜2022年も14%台)、日本(9.78%)にはまだ約6ポイント以上の伸びしろがあります。
高齢者層のスマートフォン利用拡大や、地方在住者の購買行動変化など、新たなユーザー層の取り込みがEC化率の押し上げに寄与すると考えられるでしょう。
注目される新たな取引形態
SNSを経由した購買(ソーシャルコマース)や、ライブ配信で商品を販売するライブコマースが国内でも認知を広げています。AIを活用した商品レコメンドや需要予測技術の導入により、購買体験の個別最適化が進むと予想されます。
BtoB-EC分野ではEDIの標準化がさらに進展し、中小企業を含む幅広い事業者への電子商取引の普及が見込まれるでしょう。
既存顧客との関係強化が課題に
ネットショッピング利用世帯の割合は55.3%まで上昇しているものの、2021年以降は伸びが緩やかになっています。市場への新規ユーザーの流入ペースが鈍化している可能性があり、新規顧客獲得コストが上昇する懸念もあります。
そのため、既存顧客のリピート率を高める施策—メール・プッシュ通知・ポイントプログラムの活用など—が、今後のEC事業においてより重要な位置を占めると考えられるでしょう。
まとめ
2024年の国内BtoC-EC市場は26兆1225億円(前年比+5.1%)と着実に拡大しており、スマホECの成長やBtoB-ECの電子化加速、越境ECの拡大といった多様なトレンドが確認されています。一方、成長率の鈍化や特定カテゴリのマイナス成長も見られ、市場の変化を細かく追いながら戦略を組み立てることが求められるでしょう。
